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15.27% Mに捧げる異世界鎮魂歌 / Chapter 11: 第十一話 代筆

Chapter 11: 第十一話 代筆

 コランダが反応することなく、オーガルトが一瞬でペン掴む。

「なっ――」

 

「俺が書く」

 

 コランダの腕を崇徳童子の腕が力強く引っ張ると力を入れて抵抗を試みる。

 しかし――

 

「い、いや、しかし、す、オーガルトさん。あっ!」

 

 たどたどしい言葉を放つコランダを力任せに後ろへ下げると羊皮紙の上にサラサラとオーガルトのペンが走る。

 

「――こ、これは!」

 

 赤髪の受付の女が羊皮紙を両手に持ち、ワナワナと震え始める。

 

(しっ、しまった! まさか、本名を書いたのか!?)

 

 コランダが恐怖で固まった顔をゆっくりと受付の女へと向ける。

 

「読めないわ。異国からきたというのは間違いなさそうね。コランダさん、代筆をお願いします」

 

 コランダが素早く頷くと光の速さで代筆を書き上げ受付の女へと羊皮紙を渡す。

 

「オーガルトさんね。出身地はイーストワス……確かにあの国には見知らぬ種族がいると聞くわ。年齢は20歳……ずいぶん若いのに立派な装備ね。問題ないわ、ではコランダ隊登録しました。依頼はどうします?」

 

「合同での討伐、作業は止めてくれ。うちの単独の依頼で、ある程度金が良ければなんでも構わない」

 

「そうですか。それではこちらはいかがですか? 後はこれと……これは難しいかしら?」

 

 見繕われた数枚の羊皮紙がコランダに手渡される。羊皮紙の内容に目を通すと安心したようにコランダが頷く。

 

「依頼は後で正式に報告にくる。じゃあ、また後でな!」

 

 受付の女の返事も待たずにコランダはオーガルトと三太の腕を掴むと逃げるようにギルドを走り去った。

 

 コランダ達が走り去るとギルド内がにわかに騒がしくなる。その対象はもちろん禍々しい鎧武者を纏った者に対してである。

 

「なっ、なんだあれは!」

「呪われてるんじゃないのか?」

「イーストワスはあんな奴らばかりなのか!?」

 

 冷ややかな笑みを浮かべる者もいれば、コランダをやじる者もいる。やがて、異国のフルプレートアーマーにスポットがあたり、高価な品であるやら、腕利きの名工が作ったなどと自分の目利きを自慢げに話す者もでてくる。そんな中、三人の男女が顔を近づけ声を潜める。

 

「おい、あの鎧武者、ひょっとしてアオガラが話していた奴じゃないか?」

 

 つばの長い中折れ帽を被った若い男が、口元をバンダナで隠した盗賊風の女へと声を掛ける。

 

「うーん。どうだろ。確かにあの鎧は目立つけど、それだけじゃ判断できなしね。私が見て分かったのは足さばきくらいかしら? 馬鹿みたいに重たい鎧を付けているはずなのに、忍びのような足さばきだったわ。ドラドはどう思うの?」

 

 ドラドと呼ばれた中年の男は気怠そうに頬杖をついている。中折れ帽と盗賊風の女を交互に目だけで追うと大きなため息をつく。

 

「色んな意味でヤバそうだ。俺たちパーティーの主義から考えれば100%関わってはいけない奴だ。しかし、アオガラが話していた人物であれば調べないわけにはいかない。俺はどっちでもいいぜ。ノーウェルに任せるぜ」

 

 ノーウェルは中折帽の鍔をクイッと指で持ち上げる。金髪の髪が垂れ碧眼の瞳が覗く。

 

「アオガラに出来た借りはでかい。命に関わらない範囲で奴を探るぞ。ドラド、サミ、それで構わないな?」

 

「「オーケーリーダー!」」

 

 声に合わせて皆が席を立つと足並みを揃えて赤髪の女が待つカウンターへと向かった。

 

 ※※※

 

「それにしても奴らがどの依頼を受けるかよく分かったな?」

 

 ノーウェルは中折れ帽を背中に背負い、今は長弓を手にしている。

 

「あの赤髪の姉さんには借りがあってな! 危ないことをしないという約束をしてこっそり依頼内容を教えて貰ったのだ」

 

 魔術師のドラドがヒラヒラと羊皮紙を風になびかせると依頼書の写しを盗賊のサミが奪い取る。

 

「またぁ。ギルドの女の子に手を付けると後が怖いよ。で、何々…………え、えぇ! ジャイアントトレントの討伐! ちょっと! コランダ達はいつからそんなに強くなったわけ? 私達と同じランク帯でコソコソ稼いでいたはずよね?」

 

「あぁ。奴らランク以上の依頼を受けるために誓約書まで書いて討伐の依頼を受けたらしい」

 

 ノーウェルは眉間に皺を寄せて口を開く。

 

「おいおい、どうしちまったんだ? 薬切れで血迷っちまったんじゃねえだろうな?」


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