その結果、愛美も和久と同様に、理性が本能に飲み込まれてしまった。
翌日、目を覚ますと、部屋には誰もおらず、床のガラス片はすでに片付けられていた。
シーツの上のあの一筋の赤を見つめ、昨夜の出来事が少しずつ頭の中で鮮明になっていった。
そのとき、扉の外からノックがあり、返事も待たずに、女中たちが列をなして入ってきた。
先頭にいたのは、やや女性的な装いをした男性執事で、みんなは彼を板羽さんと呼んでいた。この苗字は確かに珍しかった。
彼の笑みは、春に咲く水仙のように明るかった。
「若奥様、こんにちは。もう正午でございます。そろそろお目覚めになりましょう。まずは軽くお食事でエネルギー補給を。お済みになったら、またお休みいただいても結構ですし、よろしければ奥様がお見えになりますので、お喋りやお買い物、パーティーのご手配も承れますよ」
後ろに並ぶ女性メイドたちを見回すと、洗面器を持つ者、歯ブラシを持つ者、洗顔タオルを持つ者、中華料理を運ぶ者、洋食を運ぶ者、果物を運ぶ者、飲み物を運ぶ者など様々だった。
これはまるで産後の静養みたいに、何でも部屋で済ませろということ?
昨夜の出来事は想定外だが、思い当たる節はある。愛美は発信しかけた画面を閉じ、携帯を脇に置いた。
上着を一枚羽織り、ベッドから起き上がると、一挙手一投足に色気があり、その美しい顔立ちに女性メイドたちは驚嘆の眼差しを向けた。
「和久はどこに行ったの?」
板羽雄大の目は、まさにゴシップ好きそのものだった。シーツの赤い跡を見つけるや、目を細めてにんまり。態度はさらに柔らかくなった。「和久様はすでに会社へ出勤されております。夜には少し早めにお戻りになるかと。もしお会いになりたいようでしたら、お食事の後に車を出します。会社の方々へのご紹介にもちょうどよろしいかと」
愛美は彼を一瞥し、脇の水を受け取って一口飲んだ。「今後、私の指示なしに、誰も私の部屋に入らないで!」
「かしこまりました」
「それから、皆さん、外に出て。着替えは自分でしますし、食事も自分でダイニングに行きます」
「かしこまりました!」
雄大の一声で、メイドたちは一人一人出ていった。彼は敬意と喜びを込めて頭を下げ、数歩下がって出ていった。
ドアを閉めながら、彼はすでに電話をかけていた。細くしなやかな指が、優雅に宙へと伸びる。「奥様、確かに関係を持たれたようです。シーツに赤い証拠を見ましたよ!」
「本当、本当なの?」対面の声には、抑えきれない興奮があり、気持ちは非常に嬉しそうだった。
「そうですよ。私たちの和久様が、ついに本当の花婿になる相手を見つけたようです!」
「それは本当によかった、よかったわ」興奮した声の奥に、わずかな不安が混じっていた。「でも和久は気まぐれな子だから、関係を持ったとしても、私たちの愛美ちゃんをちゃんと守らないとね。もし少しでもおかしいと思ったら、すぐに私に報告してちょうだい」
「わかっております、奥様」
「愛美ちゃんは今起きた?」
「起きました」雄大は笑いながら外に出て、独特な足取りで歩き出した。「本当に、この九番目の若奥様は、気性も雰囲気も見ていて気持ちがいいですね」
「そうね、彼女の家族は彼女がとても温和だと言っていたわ。最初に会った時から、あの子が好きになったの」
雄大は少し考えて、「温和というより、自信に満ちていて気品がありますね。控えめでおっとりした娘というより、和久様と本当にお似合いです。見れば見るほど美しい方ですよ」
「美しさは二の次よ。もし曾孫を産んでくれたら、私は橋本家を名門にしてあげるわ!」