Bab 7: 仲間

Editor: Pactera-novel

王林の顔に焦りの表情を見て、栄閑仙は「回復は不可能」という言葉を飲み込んだ。

「わからないわ。青雲に言われたわ。可能なら、怪物を多く倒すようにって。怪物を倒せば、アイテムを落とすことがある。このような技スキルブックや、武器、その他の品が手に入るかもしれない。それらによって、個人の実力を高められる、と。ただし、単独での外出は避けるべきだ、複数で行動する方が、より安全だろう、警備隊の中に、他に信頼できる仲間はいるかしら」前世では十数人で行動していたと彼は言っていた。マンションの警備隊は、総勢20人ほど。毎朝毎晩、訓練を行っていたというから、互いのことは、よく知っているはずだった。

「特に親しい者が2人、休暇で帰省しています。他に、日勤だった者が4、5人、寮にいるはずです。寮は、遠くありません。前の通りを挟んだ向かいのマンションです。そのマンションの向かいには市場があって、市場の周りには店や小さな食堂が並んでいる。寮の食料が足りなくなれば、市場に食べ物を探しに行くだろう。詰め所の鍵を持っていますから、水を取りに戻るかもしれません。目立たない場所に、書き置きを残してきました。もし、それを見れば、こちらへ来るかと」王林は、率直に答えた。

栄閑仙は、一抹の不安を覚えた。もし数人増えれば食料は確実に足りなくなる。そうなれば外に食料を探しに行かなければならない。

しかも他の人たちは栄閑仙にとって見知らぬ人だ。彼らが手に入れるスキルブックを共有する算段はあるものの、人が多いほど交換条件の交渉は難しくなる。

今はまだ、人々はスキルブックの重要性を認識していない。レンタルや共有の形でスキルブックを手に入れることができても、後になって、特に基地に到着した後、スキルブックの価値を理解したら、後悔して補償を求めてくるのではないだろうか？

やはり、主導権を握らねばならない。そうすれば、手に入れた戦利品を、正当な形で共有できるのだから。

「では、まずは2日間、休息をとって。他の人が来るか、様子を見ましょう。怪物を狩る方法について、一つ、考えがあるの。屋上に罠や仕掛けを施し、3人か4人で一組になって、飛行する怪物を誘き寄せる。比較的安全な方法だけれど、無駄骨に終わる可能性もある。致命傷を与えられなければ、逃げられてしまうから。利点は、慣れた場所だから、逃げるのも隠れるのも容易だということ。手に負えなければ、他の組に応援を要請することもできる。互いの連携を深める訓練にもなるし、将来、物資を探しに外へ出る際の、犠牲を減らすことにも繋がるはずよ。人が多いと家の食料はおそらく足りなくなるから、途中で食料を探しに出る必要があるかもしれないし、どうかしら」と栄閑仙は言った。

「問題ありません。元々、一緒に訓練していましたし、サバイバル訓練に参加したこともありますから。そうだ、寮にいる蒋傑は、東北地方の山間部出身で、罠作りが得意なんです。信頼できる男ですから、彼が来たら、一緒に研究しましょう。この数日は、まず傷を癒し、体を慣らすことにします。栄さん、この製符書ですが、皆で見てみたものの、誰も、内容を理解できなくて。栄さんには、お分かりになりますか？これは、本当に、役に立つものなんでしょうか」と王林は、困惑した表情で言った。

この書は、製符術について書かれたものだ。霊符を作るには、体内に霊気を取り込む必要がある。

基礎修練法を修めていなければ、作ることはできない。

もしそう彼に伝えれば、栄閑仙が修練法の書を持っていることが明らかになるが、実際には彼女は持っていない。

前世では彼が萱ちゃんを救ったことがあり、栄閑仙は彼の実力を高めるつもりだったからこそ、最初に彼の身分を明かした。

しかしこの世では何も起きておらず、前世の状況とも完全に同じではない。

そう簡単に修練法を彼に教えるべきだろうか。

栄閑仙は心の中で迷っていた。

ことわざに「斗米の恩は升米の仇となる」とあるように、無条件に与え続ければ、相手はそれが当然と思い、感謝の気持ちも薄れていく。

前世では彼には一人の仲間しかいなかったが、この世では多くの仲間がいる。もし誰かが悪意を持って離間を図れば、彼がどんな選択をするか分からない。

人の心は変わりやすいものだ。警戒心は心の中に留めておけばいい、表に出す必要はない。

前世では病院で働いていたため、ほとんどの時間を患者や家族との対応に費やし、後に産休を取って家で子供の世話をしていたため、社交辞令や表面的な付き合いがさらに苦手になった。

二人の子供のせいで、他人が近づいてくるのは悪意があるのではないかと常に感じ、人と表面的に付き合うことを嫌い、自分をハリネズミのように武装していた。

しかしそれが自分をより孤立した立場に置いていることに気づかなかった。

「彼を信頼できたとしても、彼は自分の仲間も信頼できると思うだろうか。今は霊気を体内に取り込んでいるとはいえ、女性は生まれつき体が弱く、力や反応速度も劣る。魂の強さを加えても、今の私の武力値はせいぜい若い男性2、3人に勝てる程度だ。もちろん、秘密の武器を使えば、彼ら4人が一緒に来ても怖くはないが」と栄閑仙は密かに計算した。

しかし彼女にはまだ二人の子供がいて世話をしなければならず、冒険はできない。すべての切り札を表に出すわけにはいかない。

「数日後に倒す怪物から基礎修練法がドロップするかもしれない。基礎修練法を教えるわけにはいかない。一ヶ月後の混乱を考えると、人の心を試す必要はない。武力で絶対的な優位性を持たなければ、心は安定しない」栄閑仙は別の言い方をすることにした。

「実を言うと、私も、はっきりとは分からないの。ただ、東洋医学を学んだことがあって、少し、気功学の知識もある。書かれている経穴の位置などは、分かるから。もしかしたら、解明できるかもしれない、と思って」これは、嘘ではなかった。東洋医学の鍼灸における奇経八脈、十二正經という経絡や呼吸法は、霊気修練と、密接に関わっている。

前世、修行が順調に進んだのも、彼女に東洋医学の素養があったことと、無関係ではなかった。

「そうでしたか。栄さん、では、これをお預けします。皆には、俺から伝えておきますので。あの、夕食は……」王林は、頭を掻き、少し、ばつが悪そうに尋ねた。

「30分後に、夏凱と取りに来てちょうだい。ごめんなさいね。見知らぬ方と食卓を囲むのは、少し、慣れていなくて。家にお招きすることはできないの。皆には、あなたから、そう説明してもらえるかしら？」栄閑仙は、微笑んだ。前世、王林や夏凱とは、共に過ごした時間がある。だが、まだ見知らぬ者が2人いるのだ。彼らの人となりを知らぬうちは、家に入れるわけにはいかない。絆というものは、共に過ごす時間の中で育まれるものだ。人の心が崩壊し、真の混乱が訪れるのは、まだ1ヶ月先のこと。

この1ヶ月で、彼らと、良好な関係を築きたい、と願った。

「栄姉さん、ありがとうございます。この状況で、食料や薬を提供していただけるなんて、感謝しかありません。ご安心ください。あなたの許可なく、決してお邪魔するような真似はいたしません」王林は、真摯な表情で言った。

「安心したわ。ところで、皆には、私との関係を、どう説明したの？　さっき、皆に、からかわれていたようだけれど」栄閑仙は、探るように尋ねた。

「知り合いだと伝えたんですが、あまり信じてもらえなくて。先ほどの様子で、ただの知り合いじゃない、親しい仲だと思われて、それで、からかわれたんです」王林は、気まずそうな顔で言った。どうやら、最初の熱烈な歓迎には、彼自身も、少々、面食らっていたらしい。

「王林。あなたが私を姉のように呼んでくれるなら、私も、あなたを弟のように思うわ。青雲が、あなたは信頼できる人だと言っていた。だから、私は、あなたを信じる。正直に言うとね、青雲が傍におらず、女手一つで子供たち2人を抱えて、今のこの状況は、とても不安なの。だから、あなただと分かって、あんなにも嬉しくなってしまったのよ」人と人との繋がりは、真心を交わし合うことで生まれる。前世、栄閑仙は彼を警戒し、用心していたが、仲間としての責任は果たした。傷の手当てをし、夜警も代わった。だからこそ、後に彼が子供たちを心から可愛がってくれるようになったのも、共に苦難を乗り越えた絆があったからこそだ。

「栄姉さん、ご安心ください。俺がいる限り、誰にも手出しはさせませんから」王林は、真剣な口調で言った。

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