私は答えなかった。
携帯に新しい友達申請が届いた。
目立つプロフィール画像だった。
女と桐山恭弥のキスの写真で、私はその女を友達追加すると、すぐに音声メッセージが送られてきた。
「篠原詩織、私は言ったわよ。恭弥はあなたを許さないって。あなたの執事の手を一本潰したのは、軽い戒めに過ぎないの」
「恭弥は言ったわ、あなたが直接私に謝罪しろって」
「首を長くして待ってるわよ」
「外では誰もが噂してるわ。恭弥があなたを命よりも愛してるって。どんな愛し方なのか見てみたいわね」女はさらに数枚の写真を送ってきた。「どのベッドが良いと思う?」
「恭弥は言ったわ。一番危険な場所が一番安全だって。明日退院したら、あなたと恭弥の家に住むわ」
「誰も入れないあの部屋に、私が入るのよ」
女の声を聞きながら顔を上げると、ホールに飾られた巨大なウェディングドレス姿の写真と目が合った。あまりの皮肉さに、手に持っていた短剣を私に微笑む桐山恭弥の目に正確に突き刺した。
「汚らわしい」
私がホールを出ると、桐山恭弥が人々にベッドを車から降ろさせ、家の中に運び入れるよう指示しているところだった。私たちはばったり鉢合わせた。恭弥は珍しく表情を硬くした。私はドアに寄りかかり、女の喜ぶ声を聞いていた。
「恭弥、どうして入らないの?」
そして、女が振り向くと、私の目と合った。
「あら、お姉さんじゃない」女は桐山恭弥の腕に手を回し、私に挑みかかるように言った。「お姉さん、私を迎えに来てくれたの?」
「謝る気になった?」
女の傲慢さと、恭弥の目の中にある寵愛の色を見ていると、胸に細かな痛みが走った。私が応える前に、恭弥が彼女のために説明した。
「医者が美秋は静養が必要だと言っている」恭弥は彼女の名前を口にする時、優しい口調だった。「どうせ君には栄養士もいるし、食器が一組増えるだけだ。詩織、私が与えたチャンスを逃すな」
私には本当に理解できなかった。
桐山恭弥。
なぜ彼は決めつけるのか。
私が従順で、彼のために何度も原則と底線を下げると。私は恭弥の理不尽な声を聞きながら笑った。私の笑い声と同時に、執事が目の部分が突き刺された婚礼写真を運び出し、私に尋ねた。
「お嬢様、これはどこへ?」
恭弥の顔が曇るのを見て、私は傍らのゴミ箱を指差した。
「切り刻んで捨てて」
執事は頷き、はさみを取りに行かせた。
しかし恭弥は執事を呼び止め、私の前に立った。「また何を拗ねているんだ!」
「詩織」恭弥の声は冷たくなった。「言っただろう、そもそもこの件は君が悪いんだ。俺が美秋の世話をするのも君の為になることだ。恩知らずになるな!」
「そうよ、お姉さん」
葉山美秋が続いた。
「恭弥から聞いたわ。あなたと恭弥の子供はあなたの放蕩な行為のせいで失ったんでしょう。占い師は、子供を授かりたいなら善行を積まなきゃって言ったのに、あなたは恭弥の好意をわからず、悪行を重ねて。あなたが恭弥を外に押し出してるのよ」
美秋の言葉は針のように心臓に刺さり、かさぶたになった傷を再び開き、ただれさせた。私は美秋の得意げな顔を見て、美秋を止めようとする恭弥の動きに気づくと、直接美秋の髪を掴み、笑った。
「誰があなたにそんな話し方をする度胸をくれたの」
美秋が許しを請う前に、私は彼女を強く木製の大きなドアに叩きつけ、鈍い音が響いた。美秋が悲鳴を上げ、恭弥は私の続こうとする手を掴んだ。
「もういい」
恭弥は私を見た。
「美秋はまだ若くて、口が軽いだけだ!だが彼女の言っていることは間違っていない。君はいつまで悪行を重ねるつもりだ!」