夜の霓虹灯が店内のガラス窓に映り込み、いくつかの光と影を折り返していた。
距離を置いた人と猫。
そのまま、言葉もなく見つめ合っていた。
男は逆光で入り口に立ち、詩織はその頭上から視線を送り、背後の風鈴を直接見つめた。風鈴はまだ揺れが止まらず、揺れ続けていた。
まるで彼女の今の気持ちのように。
定まらない。
ふぅ……どうしよう。立ち上がるべき?それとも、このまましゃがんでいた方がいい?この姿勢、さすがに恥ずかしすぎるよね……。私、ただ猫を一匹受け取りに来ただけなのに。なんで、まだ降りてこないの……?
今の自分、絶対みっともないよね……
彰はここで立ち止まるつもりはなかった。晴彦がどうしても買いたいものがあり、それが市の中心部のこの店でしか手に入らなかった。ここを通りがかった時に、ある視線を感じ、思わず振り向いた。
その美しい子猫は、ショーウィンドウの後ろに大人しく座り、頭を傾げて窓の外の世界をじっと見つめていた。
そしてその前には、美しい女性がしゃがんでいた。
その瞬間、心の中でどんな感覚だったかは言い表せない。
足は既に無意識のうちに止まっていた。
窓の外からガラス越しにしばらく眺めた後、彼はふっと息をつき、ペットショップの中へと歩き出した。
帽子のつばの下から覗くその瞳は、美しく、真剣に見つめられると吸い込まれそうになるほどだった。まるで神秘的な渦のように。男はまだ若く、薄茶色のセーターを着ていた。不思議なことに、その色合いは詩織のトレンチコートとどこか似ていて、その上に黒のコートを羽織っていた。
詩織は彼がまだ自分を見ていることに気づいた。
彼女が軽く手を動かすと、うっかり猫の背中に触れてしまった。驚いた猫は飛び上がりそうになり、振り向いて隣の男を無言で見つめた。
再び視線を戻すと、詩織の頭が一気に熱くなった。思わず入り口に立つ彼に向かって口をついて出た。「……あの、猫を買いに来たんですか?」言ってから、自分でも信じられないほど恥ずかしくなり、穴があったら入りたい気分だった。
彼女は何を言っているんだろう、こんなでたらめを。
その甘えたような声の質問に、ゴールデンチンチラの子猫を抱えて階段を下りてきた遥も思わず足を止めた。
こんなに……こんなに優しい声なの?
猫は詩織の腕から逃れ、引き止めることもできず、男の前へと直行し、尻尾を振りながら行ったり来たりして、ニャンニャンと鳴き続けた。
遥はマスクをした男を見て、思わず吹き出した。
あのね、あなた自身がここに来た時どう振る舞ったか覚えてる?あのコーギーはまだ立ち直れていないわよ。
突然、手のひらが空っぽになり、詩織はまるで見放されたような気がした。「ちびちゃん、もう私のこと嫌いになったの?」よく聞けば、その声にはほんの少し拗ねたような響きが混じっていた。
入り口に立つ男は薄い唇を固く閉じ、女性の頭頂に視線を落とした時、口角が無言のうちにわずかに上がった。
もふもふした小さなニャンコが「ふんふん」と背の高い男の前まで駆けてきた。
一生懸命首を伸ばして、男が自分の目を見られるようにしている。
深い青の瞳には期待が宿っていた。まるでこう語りかけているようだった。
「早く私を家に連れて帰って!早く連れて帰って!こんなに可愛いのに、心動かないの?」
彰はコートのボタンを押さえ、帽子を取って人差し指に掛けると、かがんで両手でそっと小さな猫を抱き上げた。
次の瞬間、視線を詩織に向けた。
そして、長い間胸の奥で温めていた言葉を口にする。
「猫、売ってる?」
あっ、猫!売る売る売る、もちろん売ります!
遥は思わず詩織を脇へ押しやった。「イケメンがこんなにかっこいいなら、タダであげてもいいぐらい。この子、とっても品がいいのよ。あなたの雰囲気と本当に相性抜群!」
遥はぺらぺらと止まらない。