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2.85% Mに捧げる異世界鎮魂歌 / Chapter 2: 第二話 忌物

장 2: 第二話 忌物

宿場街

 

「で、街の兵士様が荒くれ者の俺達になんの御用で?」

 

「この間の借りを返してもらおうと思ってな」

 

 兵士の目の前には四人の人物が座っている。話しをしている男は痩せた頬に目を窪ませた金髪。末期の病気を患ているか、薬物を投与しているといった顔つきである。体には軽装の革鎧を身に着け、背中には炎の紋様が入ったマントを身に着けている。

 

 男の回りに座る三人の者達も同様のマントを身に着けており、フードで顔を隠している。何人かは地面の焚火であぶられた煙草をくわえ、煙を吸っている。

 

「俺たちは何をすればいいんだ?」

 

「森で忌物を見つけたらしい。明朝に冒険者ギルドの奴らが封印する前にお前らに拝借してきてもらいたい」

 

「拝借? 要は俺たちに強奪してこいと言っているのだろう。俺たちにそんなことをさせずに自分達でやればいいじゃないか?   借りを返すと言っても当然分け前は頂くぞ?」

 

 兵は鼻で笑うと嫌らしい笑みを浮かべて痩せこけた男を見降ろす。

 

「それができればここにいない。どうやら忌物は特殊な力で守られているらしいのだ。俺たちは腕っぷしはたつが魔力はてんでない。そういう摩訶不思議な物はお前らが得意だろう?」

 

「――忌物ねぇ」

 

 男は目を閉じ考えを巡らす。まだ表世界を歩いていた時に冒険者仲間から聞いたことがある。忌物一つで国が失われたことがある、と。しばらくの沈黙、その後にフードを目深に被った者の一人が口を開く。

 

「コランダさんいいじゃないですか。薬もなくなってきましたし、報酬が入ったら売春宿で一発決めながら女の首を絞めればいいじゃないですか」

 

「……俺にそんな趣味はない。しかし、悪い話ではない。魔術学院からかっぱらった古代の遺物が役に立つだろうしな。報酬は?」

 

「話はつけてある。金貨千枚だ」

 

「危ない橋を渡るだけの価値はありそうだな。よし、お前たち今から向かうぞ」

 

 痩せこけた男の合図に合わせ三人の冒険者もマントを翻らせ立ち上がる。冒険者は兵に目配せをすると次の瞬間には闇に紛れ、その場から姿を消していった。

 

「あいつら本当に大丈夫なんですか?」

 

「落ちぶれたとはいえ現役の冒険者だ。俺が話をしていた奴はかつては魔術学院にいた者だぞ。腕は立つ」

 

「魔術学院にいた者が今は薬中ですか」

 

「薬中ではない。あいつらのお気に入りは国から正規に販売されているものだ。まぁ薬に間違いはないがな、生きるのは難しいということだな」

 

 兵の男は口角を少し上げて卑屈な笑みを浮かべる。

 

 兵はその場にくすぶる火を足の裏で踏みつけると冒険者が消えて行った闇の中へと歩き始めた。

 

「この先だな」

 

 夜の帳が落ち、辺りには人っ子ひとりいない。時折、獣の遠吠えが耳に入ってくるだけの静かな夜である。

 

「光球《ライト》」

 

 フードを被った者の一人が手を上げると拳ほどの小さな光源が宙に浮かぶ。夜の帳の中に不自然な人工的な白い光が灯る。

 

 目的の物はすぐにみつけることができた。なんの変哲もない整備された森の中に突如現れる忌物。話しを持ってきた兵の言った通り、繭は四方を固く結ばれその中心には明滅する塊が存在していた。

 

「繭の中に何かいるのか……」

 

 四人の内の一人が喉を鳴らして唾を飲み込む。光源の不自然な白色も相まって繭は不気味な雰囲気を醸し出している。

 

(中身なんてどうでもいい、俺達は金さえあればいいんだ)

 

 痩せこけた金髪の男が意を決すると戸惑っている三人の仲間に指示を飛ばす。

 

「話では物理攻撃は効かないらしい。四人で四方から炎を放つ。出力を高く、一回で焼き切れ! 冒険者は朝一に来るとは聞いているが時間がかかれば邪魔が入るかもしれん」

 

 四人が距離を取り、同時に魔法の詠唱を始める。詠唱に合わせ背中に掛けたマントが薄っすらと輝き、その光が冒険者達の体に纏う。どうやらマントの能力が詠唱の補助をしているらしい。

 

「「「「ファイヤーバレット!」」」」

 

 手のひらの上に熱せられた火の礫《つぶて》が浮かび上がる。礫は炉に入れられた鋼のように煌々と光り、方向を定めると一瞬にして繭に襲い掛かる。蒸気を上げ繭の回りでは甲高い炸裂音が上がった。


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