Capítulo 7: 末永くお幸せに

Editor: Inschain-JA

役所につくと、橋本浩一は車を停めてエンジンを切った。彼はまず車のドアの特別に改造された通路を開け、松本辰也を車椅子に乗せて降ろした。

佐藤詩織はそれを見て、眉を上げた。辰也のこの用心棒はなかなかいいじゃないか。

「まだ後悔できるチャンスはあるよ」辰也は詩織を見つめながら静かに言った。詩織は首を横に振った。

「決めたことに後悔はないわ。君の両足が回復したら、それが私たちの離婚の時よ」詩織は笑いながら付け加えた。辰也は彼女を見つめ、うなずいた。

「行こう」そう言うと、彼は橋本に車椅子を押すよう合図し、先に役所へ向かった。詩織は辰也の車椅子の横を歩いた。彼の車椅子を押すことについては、申し訳ないが、そんな気はなかった。

二人が役所に着くと、入ってすぐに熱心な男性職員に案内され、ある事務所に通された。二人は身分証明書と戸籍謄本を手に、このように婚姻届を提出した。この間、10分も経っていなかった。

「お二人の末永いお幸せと、早めのお子様の誕生をお祈り申し上げます」男性は辰也と詩織に笑顔で言った。詩織は目を伏せ、心の中で目を回した。

末永い幸せに早めの子供？冗談じゃないわ。二人はただの契約結婚に過ぎない。末永い幸せと子供なんて、純粋な夢物語だ。

辰也は笑顔で「ありがとう」と返し、結婚証明書を手に取ると、橋本に彼を押すよう合図した。詩織は再び辰也の後ろについて役所を出た。まさか、こんなに早く既婚女性になるとは思っていなかった。

役所を出ようとしていた時、一行が車に乗り込んだ後、辰也は詩織を見た。

「斎藤屋敷に戻るつもり？それとも僕と一緒に帰る？」彼は詩織の予定が気になった。これまでの会話から見ると、詩織はかなり主体性のある女性だ。彼は彼女の考えを知りたかった。

「君と帰るわ。斎藤家の人たちの嫌な顔は見たくないから」言い終わると、詩織は黙り込んだ。辰也も橋本に車を出すよう指示した。

橋本は辰也の指示に従って車を始動させ、辰也が現在住んでいる家へと向かった。

車が動き出すと、車内は非常に静かになった。最終的に、辰也が先に口を開いた。

「僕の両足の治療には、どんな薬材が必要？」辰也は前もって準備したかった。詩織が本当に彼の足を治せるかどうか、彼は確信が持てなかったが、わずかな希望でも試す価値があった。彼にはまだやり残したことが多くあるからだ。生きる希望がある限り、彼は死にたくなかった。

死を恐れていないとしても、こんなふがいない死に方はしたくなかった。

「処方はあとで渡すわ。前もって準備できるわね。先に言っておくけど、いくつかの薬は猛毒よ。数グラムで人を殺せるほどの」詩織は辰也に予防線を張っておくことにした。彼女は余裕のある表情で辰也を見つめ、彼の表情の変化を楽しみにしていた。

しかし残念なことに、詩織は失望した。辰也は彼女の言葉を聞いても、表情を変えなかった。

「私が君を毒殺するかもしれないって心配しないの？」詩織は好奇心を抱いた。この人は好奇心がないのか、それとも誰に対しても良い人だと思っているのか。

辰也は詩織を見て苦笑した。彼は誰でも信じるような人間ではない。「君が本当に僕を害そうとしているなら、今この時点で細工をするはずがない。それに、君が僕に用意する薬は、飲むにしろ何にしろ、僕の目の前で君も一緒にいるだろう。君がどんな自信があるかは知らないが、僕に何かあれば、君も必ず道連れになると信じているよ」どのみち、彼には最大でも3年の時間しか残されていない。もし詩織に本当に問題があるなら、彼らは手がかりをたどることができる。

詩織は目を回した。この辰也は脅しをかけている。

彼女のことを殺すんじゃないかと心配しているだけじゃない？彼女は死にたくないし、それに背中を預けたいと思っているので、彼を殺す必要はないでしょ？

「いいわ、私の薬は薬湯に必要なものよ。薬湯の後、君に鍼をする必要があるわ。私の今の能力では、君が完全に回復したいなら、少なくとも1年はかかるわ」詩織は自分の超能力について考えた。もし彼女の超能力が終末世界と同じように十級だったら、一度で辰也を治せるだろう。残念ながら、彼女の木質超能力は今のところ一級が限界だ。

辰也の両足の筋脈から毒素を完全に追い出すには、少なくとも1年はかかる。

「1年か！」辰也は少し感慨深げだった。彼はもう回復のチャンスはないと思っていたのに、誰が想像しただろうか、彼の両足にはまだ回復のチャンスがあるとは。どうやら、彼の命は残り3年だけではないようだ。「実は、君が最初からこのような能力を見せていたら、斎藤家もそんな風に扱わなかったんじゃないか？」

辰也は詩織がなぜ自分の能力を隠していたのか知りたかった。彼の両足は多くの名医に診てもらったが、誰も彼の両足の毒素に対して手の施しようがなかった。なのに詩織は1年で治せると言う。彼はまだ詩織を完全には信じていなかった。

「なぜそのような能力を見せる必要があるの？」元の彼女にはこの能力はなかった。詩織が異世界からやって来て、斎藤家の人々がどういう人たちかを知った後、彼女はますますこのような能力を見せたくなくなった。もし彼女がこの能力を見せたら、斎藤家の権力者を引き寄せるための道具になるだけで、辰也と結婚するよりもっと悲惨なことになる。「それに、私には医師免許がないわ」

最後の一言で、辰也は笑いだした。

詩織が本当に彼の両足を治せるなら、医師免許がなくても、彼は彼女のために手続きをするだろう。それどころか、彼は詩織を彼らの部隊に推薦することもできる。

しかし、これはすべてまだ早すぎる。彼自身が詩織の能力を確かめた後で考えよう。

「ふん」何がそんなに面白いの？詩織は辰也を白い目で見て、車内のおやつ箱からお菓子の袋を取り出して食べ始めた。

車内では、詩織がパリパリとおやつを食べる音と、辰也が本をめくる音だけが響いていた。

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