月曜日の出勤、私の気分は妙にいい。
同僚たちはみな私の変化を感じ取り、何か嬉しいことでもあったのかと尋ねてきた。
私は微笑むだけで、説明はしなかった。
松井浩明は何か心配事があるようで、時々こっそり私を見ていた。
おそらく篠原晴香がすでに離婚の件を彼に話したのだろう。
午前10時、浩明が私の机に近づいてきた。
「剛、ちょっと外で話さないか?」
「勤務中だ。用があるならここで言ってくれ」
私は顔を上げなかった。
「それは...ちょっと都合が悪いんだ」
彼は周囲の同僚を見回した。
「なら話すことはない」
私はキーボードを打ち続けた。
「剛!」
彼は焦り、声が大きくなった。
オフィス中の人が振り向いた。
「どうした、松井浩明?」
私は顔を上げ、無邪気な表情で言った。
「何か用か?」
彼は何か言いたげだったが、多くの視線を感じて言葉を飲み込んだ。
「い...いや、なんでもない」
「じゃあ仕事に戻れ」
私は再び頭を下げた。
「そうだ、前に頼んでおいたプロジェクト報告書、明日までだぞ」
「準備はどうだ?」
浩明の顔が一瞬で青ざめた。
彼はここ数日、晴香のことで頭がいっぱいで、仕事どころではなかったのだ。
報告書の資料は一文字も準備していない。
「俺...まだまとめているところで...」
「そうか、じゃあ急いでくれ」
私は時計を見た。
「あと24時間ある、間に合うはずだ」
浩明は歯を食いしばって自分の席に戻った。
彼が私を恨んでいるのはわかったが、爆発する勇気はない。
会社では、私が彼の直属の上司だ。
それに彼は後ろめたさがあり、事を大きくする勇気がないのだ。
昼食時、浩明がまた近づいてきた。
「剛、頼む、どこかで話をさせてくれ」
彼の声には懇願の色が混じっていた。
私は彼を見て、うなずいた。
「いいだろう、会議室へ行こう」
会議室には私たち二人だけ。
浩明はドアを閉め、振り向いて私を見た。
「剛、晴香から全部聞いたよ」
「何を聞いた?」
「離婚のこと」
彼は深く息を吸った。
「お前が俺を恨んでるのはわかる。でも頼むから晴香を苦しめないでくれ」
「彼女は罪がない、全部俺が悪いんだ」
私は笑いそうになった。
今になって晴香を守ろうとするのか?