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3.03% 俺が『彼女』になって、ヤンデレ彼女を攻略します / Chapter 5: 男やめて、女の子始めました

Chapter 5: 男やめて、女の子始めました

Editor: Pactera-novel

少女はこてん、と首を傾げ、一瞬だけ不思議そうな顔をした。

その直後、ぱっと自分のささやかな胸元を両手で覆い、ちょこちょこと、慌てて二、三歩後ずさった。

その様子に、透は思わず眉間に皺を寄せる。「何考えてんだよ。服を買いに行ってやるって言ってるんだ。あんたに合うサイズの服なんて、うちにはないだろ。何、まさかその穴だらけのワンピースでずっといるつもりか?」

逃避行のせいで、白いワンピースはもはや黒いワンピースだ。

透はさらに言葉を続ける。「それに、自分の今の姿見てみろよ。薄汚れてて、ガリガリで、見た感じ私より身長10センチは低いだろ。おまけに、胸だって私より小さいじゃないか。そんなあんたに、私が何か企むとでも?」

「わ、私は……」

綾辻依は何か言いかけたが、やめた。透の、呆れを帯びた澄んだ瞳に見つめられ、ぷうっと頬を膨らませると、ぷいっと横を向いて現実逃避を始める。

地面にしゃがみ込んで、指で丸を描いている。誰を呪っているのやら。

だが、すぐにくるりと向き直った。「……私がいつも着てる服のサイズは」

恥ずかしいのか、綾辻依の声はとても小さい。透は耳をそばまで寄せ、ようやく彼女の服のサイズを聞き取ることができた。

想像してたより、ちょっと、あるな……?

透はスマホを取り出した。ちょうど、銀行口座からショートメッセージが届いている。『お客様の口座(****114514)へ、6000円のお振込みがございました』。

システムからのミッション報酬は、どうやら本物らしい。

透は再び尋ねた。「で、どうする?先にシャワー浴びるか、それとも私が帰ってくるのを待つか」

「わ、私……待ってる」

綾辻依はソファに目をやった。そこに座りたそうにしたが、何かを思い出したのか、自分の汚れたワンピースを見下ろし、結局、隅にあった硬い木の椅子を小走りで持ってきた。

そして行儀よく腰を下ろし、リビングの隅に置かれた観葉植物を眺めて、ぼーっとしている。

ソファを汚すのが嫌だったのだろうか。

透は思わず、やれやれとため息をついた。これなら、自分が留守にしている間に彼女が逃げ出す心配はなさそうだ。

だが、今の透にとって、それ以上に気がかりなのは、現実世界での自分の体だ!

体力+1!

体の回復!

完治の可能性!

透は綾辻依に「知らない人が来てもドアを開けるなよ」と念を押し、手を洗うと、慌ただしく家を飛び出した。

ドアを閉めた直後、すぐに心の中で叫んだ。「システム、ゲーム終了!」

【ゲームを終了しますか?】

「はい!」

ぐらり、と世界が揺れた。頭がくらくらする。体が入れ替わる瞬間の、あの突然襲ってくる無力感に息が詰まる。はあはあと何度も激しく息を吸い込んだ後、顔を上げ、壁の時計を見つめた。

18:47。

夕日が空の端を赤く染めている。現実世界で過ぎた時間は、ゲーム内での経過時間と全く同じだ。

「そうだ、俺の体!」

透はソファに手をついて身を起こし、急いで自分の体に触れた。

そして、何かがおかしいことに気づく。

おかしいだろ。体力+1の報酬はどうしたんだよ。なんで十数発はブッ放した後みたいに、ぐったりしてて立つのもやっとなんだ?

「もしかして、この報酬ってのは、時間をかけて徐々に俺の体を強化していくタイプなのか?」

透は再びソファを支えに立ち上がり、松葉杖を取ろうと手を伸ばした。が、足がもつれ、危うく顔面から床にダイブするところだった。

いや、違う。確かにほんの少しだけ、体力は増している気がする。以前の自分なら、松葉杖なしで立ち上がることすらできなかったはずだ。

「でも、ゲームのミッションはクリアしたんだよな?」

だとしたら、このゲーム、俺をハメやがったのか!

透はゲームを開き、右上にある日記帳のアイコンをタップした。ポップアップしたミッション欄には、「ミッションは完了しました。報酬は配布済みです」とはっきりと書かれている。

「じゃあ、なんで……」

透は自分のキャラクターアイコンをタップした。

すると、データウィンドウがポップアップする。

【名前:樋口透】

【性別:女】

【年齢:19】

【身長:166cm;体重:46kg】

【バスト:C-】

【体力:4→5(上限10)】

【現在地:買い物中】

【身体を切り替えますか:はい/いいえ】

身体を切り替えるって、なんだそりゃ?

透は【はい】をタップした。

途端に、体中から白い光が溢れ出すような感覚に襲われ、透は股間がひやりとするのを感じた。その直後、体がこれまでとは違う軽やかさを取り戻す。

ぶかぶかのTシャツが不自然にずり落ち、片方の袖が腕に引っかかっている。そこから覗くのは、男の肌とは違う、白く滑らかな肩。視線を下ろせば、確かな存在感を主張する上乳。

だが、問題はそこじゃない。

問題は、彼がはっきりと感じていることだ。ぶかぶかのスウェットパンツが、もはや自分の腰に留まっていてくれないのを。

じりじりと、下に滑り落ちていく。

慌てて手を伸ばして引き上げようとした瞬間、その動きに引っぱられ、ズボンはまるで誰かにずり下ろされたみたいに、スッと音を立てて床に落ちた。

次の瞬間、その細い腰では、赤いトランクスを留めておくこともできず、するりと滑らかな太ももを伝って落ちていった。

胸はずっしりと重く、股間はひんやりと涼しい。けれど、もう「タマタマ」の憂鬱はどこにもなかった。

どうやら、ゲームへの転移よりも、よっぽどとんでもないことが起こってしまったらしい。

透は、完全に思考が停止した。

彼女は慌てて身をかがめ、ずり落ちた大きなパンツを引き上げる。その瞬間、ちらりと視界に入った。

かつての「相棒」が、

可憐な「妹」になっていた。

しかも!

今度ははっきりと感じられる。今のこの体も同じように衰弱してはいるが、さっきまでの男性の体と比べれば、確実に回復している。

まさか、チュートリアルミッションの「現実世界の体力+1」という報酬は、こっちの体に反映されてるってことか?

彼……いや、彼女は、ズボンを提げたまま、再びうつむき、その瞳に恐怖の色を浮かべた。

上から見下ろす視界は、なかなかに波乱万丈で、かろうじてつま先が見える程度だ。

「……柔らかい。触覚も、はっきりしてる」

って、そうじゃなくて――

待って待って待って!

「はは、きっと俺はまだゲームの中から出てないんだ」

だよな、自分で自分をビビらせてどうするよ~。

「システム、ゲーム終了!」

彼女は馬鹿みたいに何度も叫んだが、今度は目の前に仮想スクリーンは現れなかった。

透は本当は分かっている。ゲームの中の彼女は、さっき服を買いに出かけた。そして今、目が覚めた自分はソファの上にいる。

「なんで現実世界で、女性の体をオプションで追加されてんだよ!しかもゲームの報酬、全部こっちの体に上乗せされてるし!」

どう考えてもおかしいだろ。なんで現実でまで女なんだ。せめて男の体なら、まだ受け入れられたものを。

透が顔を上げると、ふと、あることを思い出した。

ゲーム開始時、システムはキャラクターの性別を選ぶように促してきた。

そして、彼女の選択は……女。

「あの性別選択って、カノジョのじゃなくて、俺自身の性別を選んでたってことか!?」

彼女はソファに落ちていたスマホをひったくり、『七日間のカノジョ』を起動する。

ゲームの中に転移している時とは違う。

ここから見えるのは、ただのゲーム画面だ。

リビングでは、綾辻依が相変わらずあの小さな椅子に座り、観葉植物に向き合っている。時折、落ち着かない様子で周りを見回していた。

それとは別に、画面の隅には、ワインレッドのポニーテールの、二次元美少女のアバターアイコンが表示され、『待機中』の文字が浮かんでいる。

どうやら、透がログアウトする直前の行動に従い、ずっとその場で動かずに待っていたらしい。

自分がゲームの中にいない間、キャラクターは放置状態になるのか?

「……ちょっと、面白いじゃん」

「いやいや、問題はそこじゃない。俺は女の子になっちまって、もう元には戻れないのか?」

幸い、透はデータ画面で、こんな一文を見つけた。

【身体切り替え中。残り時間:2:56:23】

一日三時間だけ、女の子になれるってことか?

透の心境がどれほど複雑であろうと、この事実を受け入れるしかなかった。

このゲームは一筋縄ではいかない。だが、このゲームを使えば、自分は第二の人生を生きることができるかもしれない!

あの体力+1の報酬も、おそらく0.1だけが男性の体に、残りの0.9はすべて、この新たに追加された女性の体に加算されているのだろう。

この先、自分に影響を与える他のミッションが出てこない限りは。

女の子になることについては……。

龍だったはずの俺が、鳳凰として生まれ変わっちまった、ってか。

哀れ、我が息子よ。ついぞ実戦を経験することなく、散ってしまったか。


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