Chapter 4: 師妹は思春期
「別に見たことないわけじゃないし、それに十四歳の小娘になにがあるっていうんだ。胸もないし、お尻もないじゃないか」と、叶安平は両手を広げ、それから真剣な表情になって言った。「さっさと荷物をまとめろ。急いで武渓鎮に行かないと。もし間に合わなかったら、百蓮宗とお前は終わりだぞ」
「……」
叶安平の真面目な顔を見て、裴怜雪は一瞬、喉に何か詰まったような気がして、言葉が出なかった。
「本気なの？」
「何度言ったらわかるんだ。俺はいつだって本気だ。あの魔修はもう武渓鎮にいるはずだ」
「それなら……」裴怜雪は少し言葉を切って、尋ねた。「どうして宗主に相談しに行かないの？」
「親父に言っても無駄だ。親父の法宝と功法はあいつに完全に封じ込まれる。それに、俺は言ったことがないわけじゃないが、親父はずっと俺が物語を読みすぎだと思ってる」
叶安平は心底ため息をつき、立ち上がって裴怜雪の手を引いた。
手を引かれた裴怜雪は思わず一歩後ずさり、頬を赤くした。
「あ……あ、私の手を掴んでどうするの？」
「師妹、どうであれ、今回だけは俺を信じてくれ。この十年来の苦労は、全てこの日のためだったんだ」
「あ……」裴怜雪は弱々しく彼を見つめて、「で、でも、もし本当にそうだとしたら。あの魔修は結丹中期なんでしょう？ 私たちから向かっていったら、死にに行くようなものじゃない？」
「信じろ、師妹。お前はあいつに勝てる。俺がそばにいる。もし万が一、何か手違いがあったら、俺はお前と一緒にあの世へ行くさ」
この言葉を聞いて、裴怜雪は微かに驚いた。
一緒に死ぬって？
まるで心中宣言のようだ。
裴怜雪は視線を逸らし、恥ずかしそうに言った。「師兄、何を言ってるの？ 縁起でもない」
叶安平は眉をひそめて首を振り、繰り返した。「師妹、俺は本気だ」
叶安平はすでに決意していた。もし万が一、予期せぬ事態が起こり、裴怜雪があの魔修に勝てなかったら、彼は自らの手で裴怜雪を刺し殺すつもりだった。
彼はこの十数年来の裴怜雪との師兄妹の情を大切に思っており、彼女をあの「烏有」の手に渡すことだけはできなかった。
裴怜雪は明らかに叶安平の意図を理解しておらず、ただ叶安平が自分に愛慕を示しているように感じていた。
叶安平の固く結ばれた眉を見て、彼女はしばらくためらい、唇をきゅっと結んでゆっくりとうなずいた。「じゃ……じゃあ、私、片付けてくる」
… …
叶安平の計算では、自分と裴怜雪が武渓鎮に到着するまでには、まだ七日間の準備時間があるはずだった。
だが、実際に準備できることは、彼はもう全て済ませており、抜けは一つもない。
この一剣を、彼は十年かけて研ぎ澄ましてきたのだ。
だから、七日前に武渓鎮に来たのは、突発的な状況を心配する以外にも、もう一つ理由があった。それは、裴怜雪の心をリラックスさせ、当日、緊張しすぎて肝心な時にミスをしないようにするためだ。
これは、たった十四年間生きた裴怜雪のような少女に限ったことではない。
彼自身、転生前は二十年、転生後も十五年を生きた三十五歳の大人でさえ、やはり緊張を感じずにはいられない。
いくら何でも、彼らが相手にするのは、自分たちより二つも大きな境界結丹期の修士なのだから。
武渓鎮に着いて、叶安平は裴怜雪を連れてきて正解だったと安堵した。
——裴怜雪は並大抵ではないほど緊張していた。
叶安平は武渓鎮の宿屋を予約したばかりで、裴怜雪を連れ出して街を散歩させ、気分転換をさせようとしたのだが、通りに出た途端、裴怜雪は道行く全ての人に警戒し、誰を見ても魔修のように見えた。
少し離れたところで饅頭を買っている築基期の修士を見て、彼女は慌てて叶安平に小声で尋ねた。「師兄、あの人があなたが言っていた魔修じゃないの？！」
「師妹、あれはただの一介の散修だ」
「あ……」裴怜雪は弱々しく頷き、次に刀を背負った普通の捕吏を見て、また尋ねた。「師兄、あれじゃないの？」
「あれは武渓鎮の役所の捕吏だよ」
「……あの、髪を振り乱した人は？」
「あれはただの乞食だ」
叶安平は彼女のこの反応がとても可愛らしいと感じ、笑って言った。「師妹、お前、今、まるでネズミみたいだぞ」
「あなたこそネズミよ！」裴怜雪は不満そうに口を尖らせた。「私はそうじゃなくて……」
「怖いのか？」
「怖いのは当たり前じゃない！ 私たちが相手にするのは結丹期の魔修なんだから……」
叶安平はそっと彼女の頬をつまんで言った。「お前の師兄を信じろ。絶対に問題ない。師兄が以前教えたポジティブ語録の最初の言葉を覚えているか？」
「覚えてる」
「言ってみろ」
「どんな困難にぶつかっても、恐れるな、笑顔で立ち向かえ、恐怖を打ち消す最善の方法は恐怖に立ち向かうこと、頑張ろう」裴怜雪は自分の小さな拳を振った。「オーリーゲイ！」
「うん、だから恐れるな」
「師兄、ずっと聞きたかったんだけど、オーリーゲイって何？」
「うーん……」叶安平は少し考えてから説明した。「人を奮い立たせる言葉だと思っておけばいい」
「へえ～」
二人は通りをしばらく歩いていると、突然、前方から一連の銅鑼や太鼓の音が聞こえてきた。どうやら今日、この町で誰かがおめでたいことをしているらしい。
まもなく、婚礼の行列が二人の視界に入った。
赤い花嫁駕籠を先頭に、その後ろには十数人が鶏や鴨、結納品を担いで続き、両側では銅鑼や太鼓が鳴り響き、お囃子の音はこれ以上ないほど賑やかだった。
叶安平は特に珍しいとは思わなかったが、裴怜雪は非常に興味があるようだった。
彼女はずっと先頭の赤い花嫁駕籠を見つめ、それまでのびくびくした様子は消え失せ、今にもあの花嫁駕籠に乗り込みたがっているかのようだった。
考えてみれば、それも当然だった。
裴怜雪はもともと農家の出の娘だ。
この世界で、彼女のような娘は、小さい頃から十五歳で成人した時に、赤い花嫁駕籠に乗って良い嫁ぎ先に行くことを夢見ている。
彼女も今年で十四歳になり、ちょうど思春期を迎えていた。
しばらく考えた後、叶安平は尋ねた。「師妹、ちょっとついて行ってみるか？ 披露宴でご馳走を食べよう」
裴怜雪は慌てて視線を戻し、少しためらって首を横に振った。「私たち、あの魔修を探さないといけないんじゃないの？ 人の結婚式を見ている暇なんかないよ？」
「大丈夫だ。お前がずっと駕籠を見つめているのを見ると、結婚式を見たことがないんだろう？」
「本で読んだことはあるよ」
「じゃあ、現場で雰囲気を味わってみよう」
叶安平は直接裴怜雪の手を握り、彼女を引っ張って駕籠の後に続き、そのお祝い事を行っている一般庶民の家の前まで行った。
彼は世話役に祝いの席に混ぜてほしいと伝え、百蓮宗の看板を見せると、すぐに新郎から丁重に庭の専門の席に案内され、座ることができた。
ここに来るまでは気にしなかったが、座ってみると、彼のように食事目当てで来ている修士が少なくないことに気づいた。
彼と裴怜雪が座っているテーブルは全部で八人、全員が修士だった。
叶安平が席に着くとすぐに、隣に座っていた顔立ちの明るい若い修士が彼に話しかけてきた。
「君たちもそんなに暇で、人の結婚式を見に来たのかい？」
「ええ、先輩、からかわないでください」叶安平は頷いて言った。「私の師妹が以前、結婚式を見たことがなくて、興味津々でして。ちょうど出くわしたので、連れてきて見せてやろうと思いまして」
「なるほど、師兄妹だったのか。本当に仲が良いね」
叶安平は同席の他の修士たちを見回し、挨拶をして、ついでに彼らに「烏有」の噂を近くで聞いたことがないか尋ねようとした。
しかし、向かいの席に座っている人物を見た瞬間、彼はもう尋ねる必要はないと感じた。
その人物は顔立ちが上品で、男にも女にも見える、中性的な顔立ちで、髪は二本の長い三つ編みに束ねられ、一対の紫色の瞳はわずかに邪気を帯びていた。
間違いなく、その容姿と雰囲気は、ゲームに登場する蠱毒宗の太師と瓜二つだった。
だが、疑問も生じた。
なぜ彼のような魔修が、一般庶民の結婚式でただ飯を食っているんだ？
こいつは暇なのか？
叶安平は長く見つめることはせず、会釈した後、裴怜雪と一緒に遠くで来賓に酒を注いでいる新郎の方を見た。
しかし、烏有の方から、叶安平と裴怜雪に話しかけてきた。
「若いの、君はまだ十四、五歳くらいだろうに、すでに練気三層とは、将来が楽しみだね」
「あ……」叶安平はその中性的な声を聞き、すぐに内気な少年のふりをした。「先輩、お褒めの言葉ありがとうございます。師匠の教え方が上手いおかげです」
「そして、こちらの小さな師妹も……見間違えでなければ、もう練気円満かな？」
「あ、先輩、お褒めの言葉ありがとうございます。私の師妹は資質が良く、普段から熱心に修練しています」叶安平はにこにこと後頭部を掻き、それから裴怜雪の肩を叩き、彼女の視線を遠くの新婦から引き戻して言った。「師妹、この先輩がお前を褒めてくださっているぞ」
「あ……」裴怜雪は向かいの席の烏有を見て、ぼんやりと頷いた。「先輩、お褒めの言葉ありがとうございます」
烏有は微笑んで二人に頷き、すぐに霊力でテーブル上の酒壺を操り、叶安平と裴怜雪の前の酒杯に酒を満たした。
「お二人とも、将来は必ずや一代を築く逸材となるでしょう。この二杯の酒は、友好の証として」
叶安平は微笑んで頷き、目の前の自分と裴怜雪の二つの酒杯を見た。
酒杯の中の酒は相変わらず澄んでおり、一見したところ問題はないが、彼には分かっていた。この二杯の酒には、もう蠱が仕込まれているはずだ。
どうやら烏有は、裴怜雪の霊根の資質が尋常ではないことを見抜いたようだ。
だが、彼と裴怜雪のこの十年の苦労は無駄ではなかった。この十年の修行と服毒によって、この蠱は彼ら二人には全く効果がない。
「師妹、見るのはやめろ。この先輩がお酒を注いでくださったぞ」
「あ……ああ、先輩、ありがとうございます」
裴怜雪は酒杯を手に取り、一気に飲み干すと、再び新婦の方を見て、それからそっと叶安平の肩を叩いて叫んだ。「師兄、見て見て、新婦さんと新郎さんが拝堂の準備をしているよ！！」
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