葉山修将来への観念を最後まで貫いた。
理由も言わずに美穂の襟首を掴んで引っ張ると、美穂は驚いて必死にもがき、顔を歪めて叫んだ。「パパ!」
葉山猛は眉を顰めて口を開いた。「もう少し優しく扱え。乱暴すぎるぞ。」
まるで先ほど子供を引っ張ったのが自分ではないかのように、修は平然と返した。「葉山家の子供で注射を打たれなかった奴がいるか?大したことじゃない、何を心配している。」
幼い頃、彼はこうやって五人の息子たちを育ててきたのだ。猛は反論できず、恥ずかしそうに鼻を触った。「あのな、女の子だから看護師に注射するときは優しくしてもらえ。さもないと泣くぞ。」
美穂は唇を尖らせた。「今にも泣きそう……」
「バカだな」修は彼女を抱き上げた。「体の検査なんてたいしたことじゃない。泣くことなんてない。無料でも受けられない人がどれだけいると思っている。」
美穂は猛を見つめて「パパ……」と呼んだ。
「行け行け!」猛は腕時計を見た。「お前の兄さんに任せた。夜に迎えに行くから、泣くなよ。健康診断は悪いことじゃないんだぞ、わかるな!」
逃げられないと悟った美穂は鼻をすすったが、結局涙は出なかった。
修は彼女を診察室の椅子に座らせ、片手をポケットに入れて冷たい目で見下ろした。「本当に怖いのか?」
なぜか、他の二人の兄には初めて会ったときから親しみを感じ、距離感や恐れを感じなかった。
だがこの兄に対しては、なぜか弱気になってしまう。
「怖い……」美穂は小さな声で答えた。
修は椅子を引いて彼女の隣に座った。「怖がることはない」彼はいくつかの検査項目を開き、ペンを回しながら彼女に言った。「すぐに看護師が来て連れて行く。すぐに終わるよ。」
美穂にはそれが命の終わりのように聞こえた。彼女は本当に病院が苦手だった。前世では長い間入院していて、自由を愛する彼女にとっては思い出したくもない苦痛の日々だった。
さらに前世で死ぬ直前の時間も病院で過ごしていた。
美穂には他に選択肢がなく、そっと椅子から降りて、修の服の裾を引っ張りながら弱々しく頼んだ。「お兄ちゃん、一緒に来てくれる?」
修はじっと彼女を見つめ、少し眉をひそめてペンを置いた。「わかった」
彼はあまり乗り気でないようだったが、美穂は気にしなかった。